2大会連続でワールドカップ代表に名前を連ねたDF内田篤人。ドイツ・ブンデスリーガの強豪シャルケでレギュラーを務める26歳が、
ファンを前にした記者会見のひな壇で自らタブーを解禁した。クールなマスクの下に脈打つ熱い浪花節を垣間見せた理由に迫る。

内田篤人は目立つことを好まない。恥ずかしがりやで口数もそれほど多くなく、胸中に秘めた思いや決意を公の場で明かすのもはばかる。
日本代表のチームメイトである本田圭佑(ACミラン)や長友佑都(インテル・ミラノ)とは対極に位置づけられる、
典型的な「草食系男子」と言っていい。

清水東高時代の監督で、内田を背番号10の司令塔から現在の右サイドバックに転向させた恩師の梅田和男氏は、
教え子の一人である元日本代表の高原直泰(SC相模原)と比較しながら苦笑いしたことがある。

「日本代表になる子は高校生のときから独特の雰囲気を持っていて、高原も集団の中で飛び抜けた存在でしたけど、
(内田)篤人にはそれがまったくない。集団の中に入ってしまうと、それこそ必死に探さないとわからない。
どこにでもいる普通の子なんです」。

ワールドカップ・ブラジル大会に臨むザックジャパンの一員に選出された5月12日。東京都・丸の内の商業施設で開催された
トークショー形式の記者会見でも、内田は若い女性を中心に集まった約500人のファンの前で「こういうのは苦手」とはにかみ続けた。

眩(まばゆ)いスポットライトを浴びながら、淡々とした口調でセリフが並べられていく。その中で、前回の南アフリカ大会で
一度もピッチに立っていない内田は、幾度となく「(ブラジルでは)試合に出たい」と偽らざる本音とその理由を打ち明けている。

自らタブーを解禁した理由は2つある。まずは感謝の念。右太ももの裏に肉離れを起こし、ひざの腱(けん)が断裂していることも
判明した2月。可能ならば手術は回避したい。不安な思いを抱きながら緊急帰国し、その足で駆けつけた病院で、
旧知の医師から保存療法へのゴーサインが出された。

「ドイツで手術と言われたときは、『ワールドカップに間に合うかなと』……。帰国した日は大雪で、病院に着いた時間も
すごく遅くなったけど、翌日の朝には先生が『大丈夫だよ』と言ってくれた。代表のスタッフの方とは常に連絡を取っていたし、
ドクターやトレーナーの方もわざわざドイツにまで来てくれて治療をしてくれた。たくさんの人が関わってくれたので、
試合に出て勝つことが恩返しだと思っている」。

2つ目はかつての盟友へのエールだ。南アフリカ大会では、20人のフィールドプレーヤーで内田と岩政大樹(テロ・サーサナ=タイ)、
森本貴幸(ジェフ千葉)の3人が出場機会ゼロに終わった。

特に内田は開幕直前になってレギュラーの座を剥奪(はくだつ)された。選手にとって、試合に出られない状況ほどつらいものはない。
しかし、内田は意地もあって、当時の岡田武史監督に理由を尋ねなかった。「自分に本当の力がなかったからだ」と、
必死に言い聞かせて前を向いた記憶がよみがえる。

「苦しかったけど、あの経験を無駄にしちゃいけない、自分に返さなきゃいけないと思っていた。ドイツで4年間頑張ってきて、
いろいろな大会に出てきたことが力になっているのかなと思う。こうやってチャンスをもらえて、個人的には岩政さんと森本の分まで、
というのは自分でも気にかけている。今回23人に入れなかった選手もいるし、そういう人たちの思いを僕が少しでも背負って
ブラジルに行けたらいい」。

端正かつクールなマスクを脱ぎ捨てれば、そこには熱すぎるほどの浪花節が脈打っている。鹿島アントラーズからブンデスリーガの強豪
シャルケへ移籍して4年。チャンピオンズリーグを含めたヨーロッパの激戦場で、レギュラーを死守してきた軌跡への自負もみなぎっている。

父親の静弥さんがバスケットボールの静岡県国体代表選手だった縁もあり、内田自身もバスケットボールが大好きだ。
アントラーズ時代には、右サイドバックに対するこんな思いを聞いたこともある。「(バスケットボールの)ポイントガードっぽいかな。
僕は漫画の『SLAM DUNK』が大好きなので、宮城君を意識しています。パス出しと攻撃の起点、みたいな感じですね」。

1990年代に大ヒットした『SLAM DUNK』で、宮城リョータはコート上の誰よりも速いポイントガードとして描かれていた。
自慢のスピードを武器に、瞬く間に成功への階段を駆け上がっていった内田。屈強な大男たちが集うブンデスリーガで刻んだ
さまざまな経験を新たな力として加えて、4年越しのひのき舞台に立つ。

http://news.ameba.jp/20140517-38/


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